ナイルの賜物、エジプトへ!
”エジプトは、ナイルの賜物(たまもの)”
古代ギリシャの歴史家「ヘロドトス」が残したこの名言は、エジプトを流れるナイル川が運ぶ肥沃な土によって農耕が発達し、文明が築き上げられたことを表現しています。
紀元前3100年頃に始まり、長い歴史とともにいくつもの遺産を残したエジプト文明。
ピラミッド、スフィンクス、ファラオ、ミイラなど、古代エジプトを象徴するこれらはどれも ”紀元前” に存在したもので、数千年もの遙かな時を超えた遺産を私たちは目にしているのです。
そんなロマン溢れる歴史が詰まったエジプトへ!今回はナイル川沿いの以下5都市を10日間で巡りました。
①アスワン(Aswan)
↓↑ 乗合バス(3時間30分)
②アブ・シンベル(Abu Simbel) #85
↓ 鉄道(3時間)
③ルクソール(Luxor) #86 #87 #88
↓ 飛行機(1時間)
④カイロ(Cairo) #91 #92
↓↑ タクシー(30分)
⑤ギザ(Giza) #89 #90
エジプトについて
首都:カイロ(Cairo)
時差:-7時間/サマータイムなし
面積:約100万㎢ > 日本(約37万㎢)
人口:約1億920万人 < 日本(約1.2億人)
言語:アラビア語
通貨:エジプト・ポンド(E£)
お国柄を表す!エジプトの国旗
赤が革命と国民の犠牲を、白は国の明るい未来を、黒は抑圧されていた長い年月を表している。
出典:世界の国旗
アスワンのベストシーズンは?
Best!:11月〜3月
Good:10月〜4月
今回の旅(2023年10月)= オンシーズン
<ざっくりと言えば...>
酷暑は終わりつつもまだまだ日差しがジリジリと暑い時期!
屋外観光には水と帽子が必須ですが、湿度は低いので日陰に入れば比較的過ごしやすい気候です。
<10月のアスワン>
平均最高気温:33℃
平均最低気温:23℃
降水量:約1mm
<10月の東京>
平均最高気温:22℃
平均最低気温:14℃
降水量:約160mm
【移動】成田 → アスワン
成田(Narita)
↓ カタール航空(11時間30分)
ドーハ(Doha) ※乗継地
ドーハ・ハマド国際空港(DIA)
↓ カタール航空(3時間30分)
カイロ(Cairo)
カイロ国際空港(CAI)
↓ エジプト航空(1時間30分)
アスワン(Aswan)
アスワン国際空港(ASW)
↓ タクシー(約45分/600E£)
エレファンティネ島行き 乗船場(市内)
↓ ボート(約2分/10E£)
市内行き 乗船場(エレファンティネ島)
↓ 徒歩(約5分)
Nubian Lotus(宿泊先)
NOTE
・日本 ⇆ カイロは直行便(エジプト航空)あり
・航空券は「Skyscanner」にて予約
・ボートは24時間運行(人が出歩く時間帯は頻繁に運行している)
・宿泊先は「Booking.com」にて予約
空港で現地SIMを購入
カイロ到着後、まずは空港の到着ロビーで現地SIMを購入。
エジプトでは「Telecom Egypt」「Vodafone」「Orange」「Etisalat」が大手通信会社として有名ですが、今回はTelecom Egyptが提供するモバイルサービス「WE」で契約しました。
すべてのプランにおいて1ヶ月間有効とのことでしたが、今回は10日間の滞在なので最安プラン(2.5GB)を選択。
パスポートを提示、書類にサイン、支払いをして完了なので、所要時間は約5分。その間にスタッフがSIMを入れ替え、(日本で使用中の)SIM返却とともに現地の電話番号も教えてくれます。
結果、エジプト滞在中は常にネットを利用できて快適でした。また、車をチャーターした際に(駐車場でドライバーと落ち合うために)何度か電話も利用しましたが、こちらも問題なし。
宿泊先には大抵WiFiがありますが、レストランや観光スポットでは基本的に利用できないものと考えた方が良いので、個人旅行ならばなおさらネット接続できるようにしておくのがベター。
日本で準備できる「WiFiルーター」や「eSIM」でももちろん問題ありませんが、現地SIMは費用を抑えられて現地の電話番号も取得できるのでおすすめです。
アスワン
アブ・シンベルへの観光拠点としても知られるアスワン。
アスワン市内には、イギリス作家のアガサ・クリスティが執筆した推理小説「ナイルに死す」の舞台として登場するホテルOld Cataract(オールド・カタラクト)があることでも有名です。
正式名称:アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群
登録年/種別:1979年/文化遺産
アスワン〜アブ・シンベルの広範囲に点在する遺跡は、ヌビア遺跡群としてまとめて世界遺産に登録されています。
ヌビアとはアスワン〜隣国スーダンにかけての地方の名称であり、元々はエジプトと同一の祖先から別れた国で、文化や風貌などにおいて独自性を残す地域。
アラブ系が多いエジプト人に対して、ヌビアの人々にはアフリカ系の印象を受けますが、彼らは自らを「エジプト人でもアフリカ人でもなく、ヌビア人」と認識し、ヌビアのアイデンティティを誇りに思い、大切にする民族として知られています。
【世界遺産】フィラエ(イシス)神殿
ナイル川に浮かぶアルギア島に建設されたフィラエ神殿は、島が丸ごと神殿になっており、水上から眺めるとまるで ”海に浮かぶ神殿” のよう。
元々は、近くにあるフィラエ島に建設されていましたが、ナイル川の氾濫を防止する目的で1970年にアスワン・ハイ・ダムが上流に建設されたことで水没の危機に晒され、1980年にユネスコによって現在地(アルギア島)へ移転されました。
古代エジプト最後の王朝であるプトレマイオス王朝時代に建設され、エジプト神話に登場する ”豊穣の女神” イシスを祀る神殿。
フィラエ島はイシスが ”天空の神” ホルスを生んだ島とされており、神殿内のレリーフにはハヤブサの頭をしたホルスの姿も見られます。
プトレマイオス王朝は、 ”ギリシャ風の文化” を意味するヘレニズム時代のエジプトを支配したギリシャ系の王朝。古代エジプトの始まりから3,000年近くが経過したこの時代においてもエジプト神話の神々は継続して信仰されており、中にはギリシャ的な改変を遂げたものも現れるように。
特にイシスは、ギリシャ神話上の ”豊穣の女神” デーメーテールなどと同一視されたことにより、地中海全域で崇拝されるようになりました。
エジプト神話?
「事前に知れば旅をもっと楽しめる!「古代エジプト」とは?「エジプト神話」とは?_#93」をチェックしてみよう!
神殿の一番奥にあり、最も神聖な場所とされる至聖所(しせいじょ)には、様々なシーンを描いたレリーフが所狭しと施されています。
上の写真は、羽根を広げたイシスに守られている夫の ”冥界の王” オシリスと、その向かいには貢物を捧げるファラオの姿。
繊細なタッチで描かれるプトレマイオス王朝時代のレリーフ。新王国時代に建設されたアブ・シンベル神殿やカルナック神殿などのレリーフを見ると、その違いは素人目にも一目瞭然です。
ちなみに、レリーフを分割するように横切る線は、移転するために解体した際の切断面。
プトレマイオス王朝とともに古代エジプトが終焉した後のローマ時代には、島内に複数の小さな神殿やキオスク(kiosk)が増築されました。
ちなみに、キオスクとは庭園に置かれる小さな建物を意味するもので、景色を楽しんだり休憩したりするための施設。駅中でよく見るキオスクは、実はここから派生したものです。
施設情報
2023年10月時点の情報
※頻繁に値上がるので参考程度に
移動方法
エレファンティネ島行き 船着場(市内)
↓↑ チャータータクシー(約15分/往復 300E£)
フィラエ神殿行き 船着場&チケット売場( 入場料 300E£)
↓↑ チャーターボート(約5分/往復 350E£)
フィラエ(イシス)神殿(1時間)
NOTE
・午前(日曜)に訪問:やや混雑
・タクシーはチケット売場で1時間半ほど待機(近辺でタクシーを拾うのは難しいので市内からのチャーター必須)
・ボートはグループ単位で利用のため個人旅行者には割高(今回は居合わせた旅行者と乗り合いしたため半額(175E£)のみ支払い)
【世界遺産】岩窟墳墓群(貴族の墓)
アスワン西岸の丘の中腹にある岩窟墳墓群は、かつてエレファンティネ島を支配した貴族の墓。
Qubbet el-Hawa(クベット・エル・ハワ)= ”風のドーム” と呼ばれ、「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」の一部として世界遺産に登録されています。
エレファンティネ島はナイル川の中州の島(全長約1.5km)で、ノモスの都が置かれた場所。
古代エジプトにおいては、現代の ”州” に相当するノモス(nomos)と呼ばれる行政的な地域単位が存在し、エジプト全土は42(上エジプトに22、下エジプトに20)のノモスに分かれていました。
ノモスは州侯(nomarch)と呼ばれる長によって管轄され、やがて地位の世襲化によって豪族化し、また、中央権力(古代エジプト王朝)の弱体化に伴って勢力を強めました。
第1中間期時代にエジプトが一度分裂した後、強大な州侯たちが新たな王朝を築いて権力を争いましたが、最終的にはテーベ(現在のルクソール)の州侯によってエジプトは再統一され、中王国時代が始まります。
中王国時代にはまだ勢力を保っていた各地の州侯が大規模な墳墓を残し、特に第12王朝時代は ”州侯の時代” と評されるほどであったそうです。
岩窟墳墓群の最大の見どころは、中王国時代(第12王朝)の州侯「サレンプット2世」の墓で、約4,000年前に建設されたものでありながら壁画が色彩鮮やかに残されており、とりわけ保存状態が良いことで知られています。
岩窟墳墓群の墓の入口は基本的に施錠されていて自由に見学することはできないため、敷地内は管理人が案内してくれます。最後にはバクシーシ(チップ)を求められるので、10E£ほどを渡しましょう。
また、見晴らしの抜群の丘からの眺めも見どころ!雄大なナイル川と対岸に広がるアスワンの街並みを一望するのに打ってつけの場所です。
施設情報 & 移動方法
西岸行き 船着場(市内)
↓ ボート(約5分/10E£)
市内行き 船着場(ヌビア村)
↓ 徒歩(約5分)
岩窟墳墓群( 入場料 100E£)
NOTE
・チケット売場は岩窟墳墓群へ登る階段の麓にあり
ヌビア族の住む村
岩窟墳墓群の北側に広がるのはヌビア族の住む村。
市内行き 船着場(ヌビア村)から小型の乗合トラックをチャーター(約70E£)して村をドライブできるので、岩窟墳墓群まで来るのであればヌビア村も一緒に訪れるのがおすすめ。
市内から岩窟墳墓群のある西岸へ向かうために乗ったボートで、ヌビア村でゲストハウスを経営しているという親切なヌビア人に出会い、一緒にトラックに乗って村を案内してもらいました。
ヌビア(Nubia)とは?
→アスワン〜スーダンにかけての地方の名称。元々はエジプトと同一の祖先から別れた国で、文化や風貌などにおいて独自性を残す。ヌビアの人々は自らを「エジプト人でもアフリカ人でもなく、ヌビア人」と認識し、ヌビアのアイデンティティを誇りに思い、大切にする民族として知られる。
土曜日の夕方に訪れたからか、メイン通りのシャッターは閉まり気味で閑散とした雰囲気。
ヌビア族の家は、壁面がカラフルで幾何学文様や絵が描かれるのが特徴とされています。デザインは村によって決まっていたり、その時の流行や個人の好みによるものもあるそう。
このヌビア村にもカラフルな家々が見られるものの、全体的には寂れた印象を受けたのが正直なところ。それでもゲストハウスは複数あるので、ヌビアの文化に触れつつのんびり滞在したいという方には良い環境かと思います。
ヌビア博物館
先史時代〜(7世紀頃に始まる)イスラム時代にかけてのヌビアの歴史を知ることができる博物館。
ヌビア族の伝統的な生活風景を再現していたり、また、ヌビア地方の世界遺産であり水没の危機に晒されたアブ・シンベル神殿の移転作業についての展示もあるので、神殿を訪れる前に博物館で知識を得ておくとより楽しめるかもしれません。
古代からヌビアは、金や象牙などの資源に恵まれた地域。ヌビアという名前の由来は諸説ありますが、古代エジプト語で ”金” を意味する ”nebu” が起源と考える説が有力とされています。
太陽崇拝が行われた古代エジプトでは、金は太陽と結び付き、神から王にもたらされた神聖かつ不滅のものとされたため、古代エジプト王朝ではおびただしい量の金が使用されていました。
その大部分はヌビアで採掘されたもので、最大の領土を有した新王国時代にはファラオは金を求めてヌビアに侵攻し、現地の人々を奴隷として金採掘に従事させましたが、新王国時代が衰退するとエジプトは撤退。
やがてヌビア族が築いたクシュ王国(ナパタ王国)が繁栄し、第3代目国王「ピイ」はナイル川を下ってテーベ(現在のルクソール)やメンフィスなどを侵攻。
最終的には古代エジプト第25王朝のファラオとして君臨し、エジプト全土を支配しました。また、ピイはヌビアの血を引く黒い肌をしていたため ”ブラック・ファラオ” と呼ばれたそうです。
施設情報 & 移動方法
エレファンティネ島行き 船着場(市内)
↓ 徒歩(約15分)
ヌビア博物館( 入場料 200E£)
NOTE
・12:00頃(日曜)に訪問:混雑なし
風まかせのファルーカ(帆船)に乗船!
ファルーカとは、エンジンを使わずに風と水の流れに乗って進む帆船。
現地ツアーに組み込まれていたり、宿泊先で予約するなどして乗船できますが、アスワンでは現在も交通手段として使用されていることからファルーカの所有者は多いので、船着場周辺で直接聞いてみても乗船できる可能性があります。
今回は、ヌビア村を案内してくれたヌビア人の叔父さんが所有するファルーカに乗せてもらうことに。ルートは自由に決められるので、市内行き 船着場(ヌビア村)からエレファンティネ島を周って、エレファンティネ島行き 船着場(市内)へ向かうルートをお願いしました。
エンジンがないため目的地までの所要時間は風向き次第ですが、ナイル川の流れとともに風景を楽しむにはうってつけ。
沈みゆく黄金色の太陽と、爽やかに通り抜ける風、穏やかな水面を進むボートの音が心地よく聞こえるファルーカ乗船はとにかく最高の一言。
ルクソールやカイロなどエジプト各地で乗船できるものではありますが、小島が多いことから景色の変化を楽しめるアスワンはファルーカ乗船におすすめのスポット。
太陽が沈んだ後のマジックアワーに染まる景色は、息を呑む美しさ。
日中は日差しが強烈なので、暑さが和らぎ、刻々と色が変わる風景も存分に楽しめるサンセットの乗船が特におすすめです。
目的地までは約1時間で到着しましたが、船着場がすぐそこに見える地点で風と川の流れが均一を保ち、ファルーカは完全にストップしてしまったため、最後は近くにいたモーターボートに牽引してもらい、まさかのエンジンの力を借りる羽目に。
エンジンがないことが醍醐味ですが、もちろんそれが仇となることも知ったファルーカ乗船。
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